i-DRIVEの優位性(なぜFSTのベース車としたか)

自転車とモーターバイクの大きな違い…一言で言えばパワーソースの違いである。自転車はヒューマンパワーを、モーターバイクはエンジンを使う。自転車のパワーソースが『人力』であることは、自転車のいろいろなデザインに決定的な特徴を与えている。たとえばサドル。ペダルやクランクのストローク運動を妨げないように切れ込みが深く、幅も狭くなっている。自転車は『人力』の特性を無視して存在しえない。
i−DRIVEとは、「Independent Active Drive」の略称。ペダリングとリヤサスペンションの動きが全く独立しており、相互に影響を及ぼさない。いっさいのペダリングロスを排除し、モーターバイクには真似のできない自転車の為のシステムである。
ペダリングフィードバック現象によるペダルの逆回転運動を相殺する為に、ボトムブラケットの後下方向への動きを利用し、サドルとペダルの距離を一定に保ち、『人力』の全てを推進力に変えるシステム。i−DRIVEシステムは、FSTには欠かせないと想った。
2004GTはiD−XCという新たなリンクシステムを投入してきた。きわめて興味深いがピボットの位置が高いのがちょっと気がかりである。個人的には、旧型システムの方がスマートでかっこいいと思うのだが、更なるパワーロスの改善や軽量化を目指した結果のようだ。特に、ドッグボーンと呼ばれるBBシェル固定用のプレートが貧素に見えるのは自分だけだろうか。ところが、上り坂は軽さと相まって、バツグンの性能(上りやすい)とのインプレッション。やはりこの特性は、ロード重視の『FST』や『FSCR』に活かすべきと思う。フルサスバイクの場合、リヤサスの伸縮によるパワーロスや、それによって上りが苦手というのは、よくよく言われることだし、ここんとこは考慮した方が良いだろう。

1.独立したボトムブラケット
サスペンションはドライブトレインに影響を与えず、ドライブトレインはサスペンションに影響されない。サスペンションストロークに伴うチェーン張力の増大はドックボーン(上の3連画像の黄色いプレート)とエキセントリック(同赤色のシリンダー)によって自動的に打ち消される。

2.ただひとつのメインピボット
i−DRIVEシステムでは、たったひとつのサスペンションピボットを採用している。フロントトライアングルとリアトライアングルは、多数のスモールピボットによって接続されているのではなく、ひとつの大きなピボットによって接続されている。これによりフレームの剛性がアップし、なおかつ修理や調整作業も容易に行える。

3.簡単な構造
エキセントリックは大きなヘッドセットのような構造となっている。分解はいたって簡単。クランクをはずし、ドックボーンをはずした後、アジャストリング状のロックボルトをゆるめると、後はまさに大きなヘッドセットと同じ方法で分解できる。組み上げはこの逆。メインピボットは年に1度簡単にメンテナンスするだけでよいかと。

4.ブレーキジャック解消
ブレーキジャックとはブレーキングの際、ブレーキにかかる力がリンケージに悪影響を及ぼし、リヤサスペンションがぎくしゃくした動き(『ジャックアップ』現象という)を引き起こしてしまうこと。i−DRIVEシステムでは、ラフなブレーキングを行っても、ごく自然にサスペンションが稼働しバイクコントロールを行いやすい。あらゆる状況でバイクの自然なポジションを保つことができる。

5.コストパフォーマンス
i−DRIVEシリーズはリーゾナブルモデルからフラッグシップモデルまで、使われているi−DRIVE機能は全く同じである。GTのこの姿勢が気に入った。

6.ピボットが無いリヤトライアングル
i−DRIVEのリヤトライアングルにはピボットが無い。従っていわゆるリンケージワインドアップも起こらない。ワインドアップとは、登坂時やラストスパートをかけようとする際に生じるカセットへの悪影響のこと。立ちこぎをしたときによくわかるのだけど、ペダルの全てのパワーはドライブトレインに伝達され、バイクを進める為に使われる。また、『きしみ音』が無いのもうれしい。このシンプルな構造からフレーム剛性は、当然高くなり登り坂やハイスピードコーナーリングで抜群の安定性を誇る。

7.重心が低い
i−DRIVEシステムのマスはボトムブラケットに集中している為、走行安定性が高い。実際フレームのみにした場合、BBを中心にやじろべいのごとく前後がつり合っていた。

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